アルテニルの風 〜青い瞳の少女〜 現実と異世界のはざまに

これは、航が異世界に転移してしまう以前の物語だ。
航はどこにでもいるような普通の高校生だった。そう、あの夢を見るまでは...。

 

19話 大切な思い出 前編

都立高校に通う一年生の「成瀬 航」には親友がいる。それは、同じ中学校から進学した「中村 翔平」。

2人は入学してから同じクラスになった。

「おいっ!ワタル!!明日休みじゃん⁉︎今日晩飯食いに行こうぜっ!」
そう言ったのは航の親友である翔平だ。

航は幼い頃に母を亡くしていた、兄弟はいないから今は父と2人で暮らしている。その父はというと、いつも仕事からまっすぐ帰らずに飲み歩いているのだ。

「いいよ、今日はバイトもないし、どうせオヤジも夜遅くに帰ってくるから」
翔平はふーん、と鼻を鳴らすようにして、
「おまえのオヤジさん、まだ飲み歩いてるのか...」
「うん、相変わらずだよ」

その日学校から帰ると、航は着替えを済ませてから家を出た。バスに乗り駅へ向かうと、今度は二駅の距離を電車に乗った。翔平とは〇〇駅の改札で待ち合わせをしているからだ。

改札を抜けると、先に着いていた翔平が手をあげて合図した。
「おーい、こっちだっ!」
「おうっ」

2人は歩きながら話していた。
「どうするか?〇〇屋にする?安いし」
何を食べようか翔平が尋ねる。
「ああ、それでもいいよ」
「よしっ!決まりだなっ!!俺は特盛りにしようっ!!」

店に着いて2人は注文を済ませると、翔平が先に口を開いた。
「そういや、おまえはRPGばっかやってるけど、たまにはFPSもやろうぜっ?」
そう、2人はゲーム友達でもあるのだ。
「うーん、オレは撃ち合いの操作があんまり上手くないからなぁ...。すぐやられちゃうんだよ」
航はどちらかというと、ステータス画面を開いてじっくりと考えるゲームが好きだった。

『お待たせしました、ごゆっくりどうぞ』

食事が運ばれてくると、翔平は男らしくガツガツと食べ始めた。
「そういやさ、隣のクラスにすっげえ可愛い子がいるの知ってるか⁉︎」

翔平とは対照的に、航は椅子を引いて背筋を伸ばし、静かにゆっくりと食べている、それに橋の持ち方も綺麗だった。
意外だが、父親が躾に厳しかったのだ。母親がいないからこそ、人様に見られても恥ずかしくないよう、最低限の躾はされてきたのだろう。
男の子だから多少のイタズラや、ケンカだってするかも知れない、だが、人様の物を盗んだり、人としてやってはいけない事は厳しく教えられてきた。それに、自分がされて嫌な事は他人にもするなと。

もう一つ、父の教えの中で航が印象に残っている事があった。

それは...。

「女の子には優しくしろとっ!!!」

その父親は毎日飲み歩いているのだが...。

「可愛い子?どんな感じの?」
「うん、地毛なのか分からないけど、少し茶色っぽい髪で長めのストレートで」
航は少し考えていたが、
「オレが可愛いなって思ってる子はその人じゃないな」
「まあ、人それぞれタイプがあるしな、それよりどんな子だっ⁉」
「うん、この前教室から何気なく校庭を見てたんだよ、そしたら女子がラジオ体操しててさ」
航は少し勿体ぶって言った。
「ワタル!早く先を聞かせろよっ」
翔平は身を乗り出すように航を急かした。
「うん、目鼻立ちの整った子で髪型は長めのボブカットだった。身長は160センチないくらいかな?そうだな、158センチくらいだと思う」
翔平は興味津々に聞いていたが、
「そうか、今度気にして見てみるよ」

 

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